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Martinの「デジカメ指南」
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tips61 色再現性を重視、高画質液晶を求めて!(静止画のスペシャリスト)
デジタル接続を実現し、ようやくデジタル画像編集の環境は整ったが、残された課題もなくはない。「プリンタで出力される色調や彩度が、液晶モニタで再現」することは果たして出来るのか。「もしこれを実現できるような液晶モニタがあるとしたら、一体それは・・・」と思いは尽きない。筆者のみならず、静止画、とりわけ写真編集を行うものにとっては永遠の課題である。(しかも安価で・・・)その課題克服に向けて、独断と偏見ながらトライした実録をご紹介しよう。
<ターゲットの選定>
数ある液晶モニタの中から静止画編集に限定し、必要条件を挙げてみた。
・最大プリントサイズ(A3)の等倍表示が可能
・中間階調の応答速度を高めるオーバードライブなど速度は重視しない
・高輝度や高コントラスト比よりも視野角と階調性(グラデーション)を重視
・パネルの表面はノングレア処理(光沢液晶は鑑賞には向いているが、外光を反射するし何より目が疲れる)
・内部ガンマ補正を含め詳細な画質調整機能 他
<そこで真打登場!>
液晶モニタといえばやはり定評ある「ナナオ(EIZO)」。そして、数あるラインナップ中から、グラフィックやCADなどのプロ用途をおもな対象とした「FlexScan」シリーズの最上位モデルFlexScan L997をセレクトすることとした。
・21.3インチUXGA(1600×1200対応)でA4見開きを等倍表示可能
・色調変化の少ない低色度変位タイプの液晶パネル(スーパーIPSパネル)を採用
・視野角は水平/垂直ともに170度、輝度250カンデラ/平方メートル、コントラスト比550:1
・滑らかな階調を表示するガンマ補正機能搭載
・細かな色相・彩度調整が可能:6色独立補正機能搭載
・低階調部まで鮮明に表示する14bit内部演算処理
・入力インタフェースはDVI-I×2、2ポートのHi-Speed対応USB2.0ハブ 他
<大型液晶ゆえドット抜けの恐怖>
液晶ディスプレイを購入して一番心配なことはドット抜けである。高いお金を払って、期待に胸膨らませて購入した液晶ディスプレイにドット欠けがあったとしたら、とても悲しいことである。ちなみにドット抜けとは、液晶モニターの画面を構成する赤・緑・青のいずれかの画素(ドット)が常に点灯するか常に消灯してしまい、まるで画面にゴミが着いたか、小さな星が画面内に現れたかように表示される現象のことで、一般的には少数のドット抜けは不良品不良品または故障と見なされず、初期不良・ 故障等の扱いにはならない。
そこで最近よく目にするのが、Shopでの「液晶モニタドット抜け保証」がある。これは液晶ディスプレイ 部分に1個以上のドット抜けが確認できる、または発生した場合に交換するというもので、注文時に必要回数分を申し込み、一定の料金を支払ういわば保険みたいなものである。(サイズによっては多額となる場合も多い)実際ドット抜けがなければ無駄金となるが、運悪くドット抜けが重なるならば最悪である。筆者も、FlexScan S170購入の際に「液晶モニタドット抜け保証」1回分を利用したことがあるが、その際には幸運にもドット抜けはなかった。
しかし、今回は21.3インチUXGAの巨大液晶モニタであり、万が一のことを考えると心が痛む思いである。ダメもとで、EIZOダイレクトに問い合わせてみたが、返ってきた答えはお決まりの文句。(汗)種々の事情を勘案した末に、あえてEIZOダイレクトにて購入。そして、液晶の隅から隅まで(穴が開くほど)チェックしたが、幸運にもドット抜けはなかった。(めでたしめでたし)
<いざ開封〜セットアップ>
液晶モニタを所定の位置に置き、貼付されているケーブル(もちろんデジタル)でPCと接続。同様に、ユーティリティ起動用USBケーブルでPCと接続し、いざ起動!が・・・、画面はブラックアウトのまま(汗)
あとで気付いたことであるが、本体とPCを接続するUSBケーブルは、パソコンを起動後に接続するよう指示されていたのであった。(汗)
次に、本体に付属しているCD-ROMからユーティリティなどをインストール。(プロファイルは、色温度6500K・ガンマ値2.2をダウンロード)後の手順は、画面のプロパティを開き、設定メニューから画面の解像度を、推奨の1600×1200ピクセルにセットする。さらに詳細設定ボタンを押して、色の管理メニューから追加ボタンを押して、ダウンロードしたカラープロファイルを選択。規定値に設定ボタンを押したあと、OKボタンを押してとりあえず完了。
ここでマニュアル(CD-ROMに収録)にひととおり目を通した後、プリセットモードなどの初期設定に移る。画質のプリセットモードには、「Text」、「Picture」、「Movie」、「Custom」、「sRGB」、「External」の6通りがある。従来のFlexScanシリーズと同様、前面にあるボタンから選択OSDを起動してプリセットモードの調整を行うのであるが、この方法は実に難解。ボタン操作が慣れないせいかうまく調整が出来にくいのである。(FlexScan S170導入の際にも、かなりてこずった恐怖の記憶が蘇る・・・笑)
幸いなことに、L997ではユーティリティの「ScreenManager Pro for LCD」からも調整が可能で、こちらはGUIによるマウス快適操作で、OSDメニューよりはるかに調整しやすい。ここではとりあえず、プリセットモードは「sRGB」モード(画像編集用途)にセットする。なお、液晶の輝度が非常に高い(明るい)ため、80%に減光した。
<余裕の大画面>
ひととおりのセットアップ終え、お気に入りの画像を表示してみる。さすがは、21.3インチUXGAの大型液晶パネル。A3見開きと言うだけあって、従来の縮小した小さな画面では得られなかった開放感や色調・彩度・コントラスト・フォーカス(ピント)などが一目瞭然で、印刷物に近いイメージで編集・閲覧できるのは何よりの強みである。通常のプリントアウトがA4〜A3であることを考えると、原寸でのレタッチ(画像編集)環境は、まことにありがたい。昨日まで、縮小した画面とにらめっこしてレタッチしてきたことが嘘のようである。
<さて、実力の程は・・・>
約30分のインターバル後、予め撮影しておいた多くのRAWデータの中から、セレクトした画像をPhotoShopCS2、CameraRAWにて現像処理。そして、PX-G5000にてA3プリントしたものを、画面と横ならべで比較してみた。その結果、sRGBモード標準設定の色温度(6500K)が若干高いせいか、やや青みががかって見える。そこで、画質のプリセットモードをすべての調整機能が使える「Custom」モードに変更し、色温度を5500Kに設定したところ、かなり印刷イメージに近くなった。(ガンマは標準値2.2のまま)
ちなみに、すべての調整機能が使えるのは、Customモードだ。項目を列挙すると、明るさ、コントラスト、色温度(500K刻みで4000K〜10000K)、ガンマ(0.2刻みで1.4〜3.0)、色の濃さ、色合い(色相)、ゲイン(RGB個別)、6色調整(RGB/CMYの色相を個別調整)がある。あとは微調整。細かな色相・彩度調整が可能となる6色独立補正機能で「ああでもない」「こうでもない」と試行錯誤を繰り返し、ようやく満足行くレベルに到達した。(汗)
なお、さらに正確な色を求めたい人は「キャリブレータ」(ディスプレイにいろんな色を表示させてその色を専用の機器で計測し、それに合わせてディスプレイのプロファイルを作成する装置)を使うことになるが、これが半端な価格ではなく液晶モニタより高額。簡易版も存在はするものの、一般ユーザーでこれが必要かどうかは、いささか疑問である。
(筆者としては)要は、プリンタで出力される色調や彩度が液晶モニタで再現(その逆もあるが)されれば十分である。つまり、印刷物と液晶モニタのマッチングが取れれば、思う存分、RAWデータの現像・編集処理に没頭することができ、編集したイメージどおりにプリントアウトされるわけであるから、あとは編集者の技量が作品作りに生かされるわけである。
<さらに上を望むとしたら・・・>
AdobeRGBの画像が、忠実に表示できる液晶モニタだ。Adobe RGBは、アドビシステムズ社が1998年に提唱した実用的なRGB空間の定義で、sRGBより広い色空間が得られるため、より鮮やかな色再現が可能となる。また、画像の加工や編集においてもより自由度が高くなるといわれている。(多くのデジタル一眼レフで採用されているカラーモード)
しかし、現在の液晶モニターは、基本的にsRGBの色域を再現できることを目標値に作られているため、AdobeRGBの色域を表示することは出来ない。現在、唯一、プロ向けに、ナナオからAdobe RGBの色域に対応した1920×1200ドット表示(WUXGA)対応22.2インチワイド液晶ディスプレイ「ColorEdge CG220」が発売されているが、実売価格70万円前後という破格値は論外である。
FlexScan L997とて、はっきり言って安い買い物ではない(実売価格17万円前後)その他にも候補はいくつか存在するが、あとはユーザーの判断にお任せしたい。なお、モニターで再現出来ない色であっても、プリンターで再現できる色もあるのでプリント時に効果が得られる場合があるといわれている。現に最近のインクジェットプリンタで、sRGB色空間より広い色域を再現できるようになった機種が発売されている。
現に筆者も、AdobeRGBで撮影し、PhotoShopCS2&CameraRAWで現像。そして、プリンタのカラーマネジメント(AdobeRGB、ICCプロファイル)を利用してプリント仕上げを行っている。現在の液晶モニターで、AdobeRGBの色域を表示出来なかったとしても、プリンタで出力される色調や彩度が液晶モニタで(たとえ完璧でなくても、ほぼ近い形で)再現できるように、調整に時間を割いているのである。(もちろん色再現性を重視した高画質液晶を選んでの話であるが・・・)
<おわりに>
「プリンタで出力される色調や彩度が、液晶モニタで再現」筆者のみならず、静止画、とりわけ写真編集を行うものにとっては永遠の課題。あくまでも趣味の世界と断りつつも、一握の可能性を求めて限りない挑戦は続く!
2006年03月 write.
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