本文へスキップ
Martinの「デジカメ指南」
tipsメニューへ戻る
menu
tips106 初めてのデジタル一眼(たかが構図、されど構図)
フィルム一眼レフでは、現像をするまで結果は分からないために(これ!という被写体には押さえの押さえとして)小刻みに露出を変えて撮影してきたものであるが、結果オーライのデジタル一眼レフでは、撮影即、 結果が分かるので、手ぶれ、ピンボケに注意さえすればいとも簡単に撮影が可能となってきている。また、RAWデータで撮影すれば極端な露出オーバーでない限り(たとえホワイトバランスと間違ったとしても)問題なく思い通りの現像結果が得られるから、フィルム一眼レフ時代のように露出補正にシビアにならなくてもひととおりの撮影は出来るのである。
さて、このほどデジカメ指南の読者から「デジタル一眼レフを手にして約1年半、ひととおりの撮影は何とかこなせるようになってきたが、インパクトある作品には程遠い。構図についてはひととおり理解しているものの、いざ現場に立つと実践できない。なんとかならないか」という質問をいただいた。
そこで、今回は「構図」についてさまざまな角度から考えてみたい。
<はじめに>
本論に入る前に、基礎知識として共に重視されている構図を、絵画と写真の立場から紐解いてみたい。
絵画の場合、限られたキャンバスの範囲内で構図を組み立て(作者の必要とするものだけをキャンバスに書き加え、主題の表現を妨げる不必要なものは描かない)表現するのに対して、写真の場合はカメラを向けて写したものは全て写ってしまうため、作者が心に感じた部分をカメラのファインダーで切り取り(フレーミングし)、不必要な物を画面から排除する作業が必要になる。
これが「絵は足し算の芸術」、「写真は引き算の芸術」といわれる所以である。
写真の場合は、いかにフレーミングが重要かということがお分かりいただけるであろう。
<フレーミングとは>
ファインダーの枠(フレーム)の中に被写体をどう収めるか、あるいは(風景などの場合)被写体のどこをフレームで切り取っていくかを考える行程。このフレーミングで、作品の全てが決まると言っても過言ではない。それほど重要な行程にもかかわらず、被写体自体に撮らされるあまり、安易に撮影してしまうことはあるまいか。
なるほど、ピント合わせはオートフォーカスで、露出も自動露出でと、カメラまかせにしてシャッターを押すだけでも、きれいな写真が撮れてしまう。しかし、いかに高性能のカメラとて「何をどう撮るか」、「どのように被写体を画面に配置するか」までは答えてはくれない。つまり、撮影者が自分で考え、決めるしかないのである。
目の前に無限に広がった景色の中から、自分がここだと決めた部分をファインダーの枠に切り取っていく。そして、その画面の中で、ピントを合わせるべき位置を決めたり、ボケの具合をコントロールしたり、前後の重なりやものの見え方を工夫したり、露出を決めたりといった画面構成が決められていくのである。
漠然とシャッターボタンを押すのではなく、なぜそこへレンズを向けるのかを今一度ご自身に問いかけてみていただきたい。考えることこそ作品づくりへの近道、とにかく実践あるのみである。
<トリミング>
写真の世界には画像を切る作業として「フレーミング」の他に「トリミング」という作業がある。
トリミングは、予め撮影された画像の形を整形するための手法であり、フレーミングとはまったく違う。しかし、デジタルの高画素化が進んでいる現状では、撮影後にトリミングしたとしてもそれほど劣化しない理由などから、多用される諸兄も少なくないと聞く。結果として、「後でトリミングすればなんとかなる」と思うと、ついつい「フレーミング」が散漫になり、中途半端な作品しか生まれてこないもの事実。
迫力ある作品づくりを目指すならば、とことん「フレーミング」に拘っていただきたい。
<ベテランの場合>
写真をある程度撮っていると、構図パターンがファインダーを覗いた時に瞬時にいくつか思いつくようになる。
「なぜ、すぐに構図パターンを思いつくのか・・・」
(アバウトな話しながら・・・)これまでに数多くの撮影情報が脳にインプットされているからこそ、ファインダーを覗いた時に瞬時に再現可能となるのである。
つまり、経験に勝るものはないと言いたいところであるが、初心者の方々にそれを要求するのは酷な話。ならば、写真雑誌や展覧会など他人の作品を数多く見るなどして、それを補うことをお勧めする。ただし、写真を単に情報として見ている限り頭には残ることは稀。例えば三分割構図などの物差しを当てて見るだけで、作品に対する見方はずいぶん変わってくるであろう。
<何を撮りたいのか>
一般的に、画面にあれこれと入れようと欲張るあまり、出来あがった写真からは何を撮ろうとしているのか、作者の意図が分からないことが多い。
画面の中にたくさんのものを入れてしまうと、何を撮っているのか分からない状況説明的な写真になってしまう。きれいなものがあるのは誰が見ても分かるが、背景に余計なものが写っているために、撮影した人の意志がほんとうに伝わる写真にはなっていないのである。
何よりも大事なのは、「何を」「どう」撮りたいか(表現したいか)という作者の思い。そして、撮った写真を通じて相手に何を伝えたいかである。
・先ずは「何を」「どう撮りたいか」決める
・主役を見つけてフレーミング、(例えば)三分割構図に当てはめ(背景処理が可能か)画面構成していく。
・条件がそろったところで撮影する。(だめなら次を探す)
あとは、経験(何度も足を運ぶ)と気象条件次第であろうか。
また、「構図とフレーミングの意味が分からない」という質問をよく耳にする。
(その場合、筆者はいつもこう答えることにしている)
構図は、作品づくりへの基本パターン。フレーミングは、構図を実現させるためのいわばデザイン(もちろん背景処理や不要なものを排除するなどの画面構成)作業だと。
<先ずは主役探しから>
人物撮影ならば迷うことのない「主役」選びでも、こと風景や花の撮影では(あちらこちらと)目映りするあまり主役を決めかねるケースも多い。そこで味方となるのがズームレンズである。
撮りたいものをハッキリさせるためには、被写体に近づいたりズームを括用するのが一番の近道。何気なく見ている風景も、ズームアップすることでいろいろなポイントがあることに気づく。早い話が、狩人が双眼鏡で品定めをするようなものである。
花の場合ならズバリ! 「色」「形」「バランス」が決め手。あとは背景処理が可能であればいうことなし。(主役・脇役・背景処理)
ところが風景の場合は遠景である場合も多いので、ポイントとなる被写体(例えば木)を、「横位置」で狙うのか「縦位置」で狙うのか、どのくらいの「大きさ」で扱うか「どこまで撮す」のかなど、遠くになれば遠くになるほど選択肢は少ない反面、近景の場合は他の被写体同様に、背景処理まで計算に入れなければならない場合も少なくない。つまり、近ければ近いほど、ポイントとなる主役の器量が問われると言うことになろう。
<フレーミングでイメージは変わる>
黄金分割、三分割、シンメトリー、日の丸、対角線、曲線など、雑誌を見れば様々に解説されている。
筆者がお勧めしたいのが三分割構図である。画面を縦横に三分割する線を引き、その交点や交点を結ぶ線(ケースによっては面)などに被写体や画面の線を配置するとバランスよく見えるという絵画の技法である。
例えば水平線を扱う場合(水平線が)画面の中心にあっては(画面を2分割して)どちらを強調したいのかが分からない。そこで、上「1/3」若しくは下「1/3」に合わせることでることで、バランスよく見せることが出来るなど、それでなくとも単調になりやすい風景撮影ではよく用いられている構図である。
<レタッチソフトで構図確認>
撮影を終え、自宅のパソコンで撮影画像をじっくりとチェックする。それは楽しいひとときではあると同時に重要な反省の場とも言える。
日頃、何気なく使用しているRAW現像ソフトにおいても、撮影済みの画像を三分割法で評価できる機能が掲載されているのをご存じであろうか。ちなみに、筆者が愛用しているAdobe Lightroomにおいても早くから搭載されている機能で、現像モジュールのトリミングがこれにあたる。トリミングをしない諸兄には、お馴染みでないかもしれないが、トリミングボタンを押すと三分割構図の定規が表示されるので、自らが撮影した様々な画像をチェックされてみてはいかがか。構図の勉強にはうってつけだと申し上げておこう!
自分が主題にどのように惹かれてシャッターを切ったのか、なぜそこにスペースを空けたのか、主役や脇役の位置が変わると写真の持つ流れや物語性はどう変化していくのか、横位置がいいのか縦位置いいのかなど、パソコン上で改めてフレーミングをやり直してみると、論理的に構図法のノウハウが自然と頭に入ってくるであろう。但し、ここでのトリミング作業は、あくまでも定番構図を自分なりに解釈するためのツールとして利用するのであって、あくまでもノートリミングでの作品作りを目指していただきたいものである。
なお、このLightroomのほか、ニコンのCaptureNX、市川ソフトラボラトリーのSILKYPIX、などにも同様の機能が搭載されており、初心者の方々にとっては朗報となろう。
<究極の構図とは・・・>
写真を撮るときの構図には決まりというものはない。どんな構図で撮影しても自由なのである。ただ必要なことは、何を撮ろうとしているのか明確にするためにも、撮りたいものが画面の中で一番目立つように工夫すること。
写真はそこに写っているものから見ている人がイメージを広げていってくれるもの。そのためにも被写体を単純化(主役と脇役、背景処理)させることで、見る人にきちんと内容を伝えたい。余分なものが写っていては、見る人に余計なイメージを与えてしまうだけでなく、メッセージ自体は弱くなってしまう。
(持論ながら)完璧な構図というのは結果論でしかない。
構図は撮ったその場で完全にまとめられるものではないので、少しずつフレーミングを変えながら、横位置だけではなく縦位置の構図でもたくさん撮影されることをおすすめしたい。(あの時もう少し撮っておけばよかったと)後で泣かないためにも選択肢は多いほうが(たくさんの候補の中から一番いいのを選べるから)いいのである。
ちなみに、よく日の丸写真(構図)はだめだといわれているが、しっかり構図を考えたうえで一番まとまるのであれば、それでいい。セオリーを打ち破るのも、究極の選択のひとつであるのだから・・・。
<おわりに>
ひとくちに「構図」や「フレーミング」と言っても、なかなか(理屈を)言葉では伝えにくいテーマ。しかし、構図は作品づくりへの基本パターン、フレーミングは構図を実現させるためのいわばデザインと考えればより身近になる。主役が決まったら、どの構図パターンに当てはめて表現するか、次にフレーミング、最後はさまざまな画面構成を経てようやく撮影準備が整うのである。
セオリーは(頭の中で)理解してはいても、実際に撮って(確かめて)見なければ絵に描いたもち。単なる知識だけに終わらせないためにも実行あるのみ。いろいろな撮影機会をとらえて、お試しいただくことをお勧めする。
2009年09月 write.
このページの先頭へ
ナビゲーション
トップページ
top page
はじめに
introduction
プロフィール
profile
使用機材紹介
item
不定期コラム
column
ギャラリー
gallry