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Martinの「デジカメ指南」
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tips92 マクロ撮影徹底研究(レンズ編)
雑誌のグラビアで見かけるような花のクローズアップ写真。「どうせ撮るならこのような洒落たイメージの写真を…」とお思いの方も多いのではなかろうか。一般的に、このような撮影はマクロ撮影と呼ばれ、マクロモードあるいはマクロレンズを利用して撮影することなる。
これまでマクロ撮影については、過去のtipsでも何度となく取り上げてきたが、その魅力から常にリクエストの多いカテゴリであることは言うまでも無い。しかし、ひとくちにマクロ撮影といっても、レンズなどのハードウェアからテクニックに至るまで挙げればキリがないほど奥が深いのも事実。そこで、筆者の過去の経験に基づき(独断と偏見ながら)カテゴリ別に、複数回に渡って取り上げてみるたい。第1回目のテーマは「レンズ編」
さて、如何相成るや・・・
<マクロレンズとは>
文字通り高い撮影倍率で接写撮影ができるよう設計されたレンズ。単に接写撮影といっても、生物などに接近せずに大きく撮影できる望遠マクロと呼ばれるタイプのレンズもあり、必ずしも被写体に接近して撮影できるという意味ではない。マクロレンズは、最大撮影倍率が等倍(被写体がフィルム面に同じ大きさで写る倍率)から1/2までのものが大半で、中には等倍から3倍までの撮影が可能なマクロズームもある。
AF MACRO ZOOM 3x-1x F1.7-2.8
実はマクロレンズではなくても、ある程度の接写はできる。特に、最近のズームレンズは最短撮影距離が短く、かなり高い撮影倍率を得られるため、非常に優秀な接写能力を持つものも登場してきている。しかし、マクロレンズのメリットは、単に接写倍率がより高いだけではなく、接写時の画質に優れるところにある。そこには、次のような隠された秘密が存在するのである。
<厳しい設計基準>
ある文献によれば、「一般の撮影レンズが設計基準値を焦点距離の40倍程度に設定しているのに対して、マクロレンズは設計基準値が焦点距離の4倍〜10倍程度に設定されており、巧妙な収差補正機構を組み込んで近くでピントが合ったときに最も結像性能が良くなるように設計されている。また、マクロレンズは設計段階から像面の湾曲やディストーションの許容量が極めて小さく設定されているのも一つの特徴で、精密な複写にも利用されるため像面の平坦性や、歪みに対して極めて厳しい基準が設けられている」とある。早い話が、一般のレンズは無限遠で最高の画質を得られるように設計されているが、マクロレンズは、近距離で最高の画質が得られるようになっているのである。
<マクロレンズの用途?>
当初は文献の複写用という特殊な用途に開発されたマクロレンズであるが、いまや写真を趣味とする人にとって必要不可欠なレンズとなっている。肉眼の視覚を超えた魅力あるクローズアップの世界、近寄って撮影することで意外な美しさを追求することができるなど、その人気は高い。しかし・・・である。
マクロレンズというと、花とか小物、昆虫などを撮るレンズと思われていまいか? 近距離で最高の画質であれば、中距離、遠距離でも良い画質であるのは当たり前、そう、つまりマクロレンズは画質が一般レンズに比べてはるかに良いのであるから、花を撮ったりと近接撮影にしか使わないのは実にもったいない。また、多くレンズには円形絞り(真円に近い美しいボケ描写)が採用されているため、自然なボケ描写を堪能出来ることから、ベテランの多くはポートレートなど一般用途の撮影にも常用しているのである。
<マクロレンズのラインナップ>
一眼レフメーカー(やレンズメーカー)では「接写」に特化した性能を持つマクロレンズが必ずラインナップされている。焦点距離別には、概ね50ミリ前後の標準系と100ミリ前後の中望遠系、200ミリ前後の望遠系に大別される。焦点距離の違いは、ワーキングディスタンスと呼ばれるレンズ先端から被写体までの距離。
中望遠や望遠マクロなどのようにワーキングディスタンスが長ければ、被写体との距離を長くとることができるため、近づくと逃げてしまう昆虫や小動物などを狙う場合や、ストロボ等の補助照明を使いたい場合などには有利。反面、その分レンズは長くなり、ブレやすくなる。その点、焦点距離が短い標準マクロであれば、ワーキングディスタンスが短く被写体により接近できるため、例えば小さな花のローアングル撮影時などでも小回りが効き、レンズも短いのでカメラブレに対しても有利である。
標準系マクロ
中望遠系マクロ
望遠系マクロ
<レンズの特性>
標準マクロは“標準”ということからも、標準レンズ(フィルム一眼レフの場合の50ミリ相当)のように手軽に使えるオールマイティーなレンズ。クローズアップにも強い標準レンズと考えておけばよい。手持ち撮影にも強く、複写ということなら抜群の威力を発揮してくれる。ただし、フィールドで草花などを2分の1倍以上アップしようとすると、ワーキングディスタンスが短くて苦労する(近づくと逃げてしまう昆虫や小動物。自分やレンズの影がじゃまになり、ライティングも自由にはできない)ことになる。また、中望遠マクロに較べると比較的軽量コンパクトで安価である。
他方、中望遠マクロもクローズアップ撮影に強い中望遠レンズだと考えれば分かりやすい。ポートレート撮影に自然な描写の中望遠レンズが向いてるのと同じに、草花の撮影にはワーキングディスタンスも適度にとれ、ボケ描写、背景の整理にも効果的な中望遠マクロが適しているといえる。しかし、いちばんの問題はプレやすいこと。2分の1倍以上の撮影を手持ちでこなすのはとても辛く三脚は必須となる。また標準マクロより大きく重く値段も高い。
<マクロ付き?レンズ>
ちなみに一般のズームレンズに付けられている「マクロ付き」の名称や、ズームレンズの最短撮影距離付近を指す「マクロ領域」などの言葉は、早い話が単に近づいて撮影が出来るといった意味であり、マクロレンズとして設計されたレンズと同等の性能を有するという意味ではないので誤解なきように・・・。
<ポートレートマクロ>
登場から25年。何人ものプロ・アマチュアのカメラマン達によって育てられてきたマクロレンズ。別名「ポートレート・マクロ」と呼ばれ、美しいボケ味とシャープな描写のロングセラーレンズで、マニアの中では中望遠マクロならSP90mmと言われるほど、世界中のカメラマンに愛されてきた伝説のマクロである。
クローズアップ撮影はもちろん、無限遠までピントの合う通常の中望遠レンズと同じく、風景写真やポートレート(人物写真)まで、幅広い用途に利用でき、自然な遠近感の描写、手持ちでも撮影できるような身軽さが魅力。ちなみに、マニアの間では「マクロ撮影だけしていたのではSP908の特徴は理解できない」「マクロを使った通常撮影、あるいは通常よりも近接した撮影でこそ実力を発揮する」と言わしめるほど根強い人気があり、マクロレンズで撮られた写真だけのコンテストも企画されるほどである。(残念ながら筆者は純正派のため縁はないが・・・)
伝説のマクロSP90
写真における理想のボケを徹底追求し、輪郭が不自然に強調されず、なめらかでとろけるように美しいボケ味を実現した世界に誇るミノルタが開発したマニュアルフォーカス専用のスペシャルレンズ「αSTF135mm/F2.8[T4.5]である。
※STFとはスムース・トランス・フォーカスの略。
アポダイゼーション光学エレメント(と呼ばれる特殊効果フィルター)により、前ボケ・後ボケを問わず、なめらかで美しいボケ味を発揮。2線ボケが発生しないため、ハイライトは自然な広がりを持ち、ボケを生かしたナチュラルで立体感のある映像を実現。また、点光源のボケが欠ける口径食が出ることがなく、画面周辺まで自然な描写力を発揮する。もちろん、ピントの合っているところは抜群にシャープでクリアな描写力を実現している。(レンズ単体で1/4倍までの撮影が可能。さらに、テレコンバーターを使用すれば、より高い倍率での撮影が可能)
それはつまり、ボケ味に徹底的にこだわった唯一のレンズであり、背景は形を残しながらもとろけるようにボケる、まさに史上最強のボケ味、ピント面のシャープさは、超Aクラスのスーパーレンズである。なお、ミノルタ(コニカミノルタ)のカメラ事業廃止に伴いソニーに引き継がれ、現在もなお、αシリーズの単焦点レンズとして君臨している。※ページTOPの画像は、全てこのレンズで撮影したものである
αSTF135mm/F2.8[T4.5]
<まとめ>
最近は高倍率ズームの普及によりズーム1本で何でも撮れてしまう時代となったが、近接撮影、とりわけ前ボケ・後ろボケなど背景の美しさにおいてはマクロレンズの足元にも及ばない。高画質ゆえに、肉眼の視覚を超えた魅力あるクローズアップ撮影からポートレート・風景などの一般撮影に至るまで幅広い用途に力を発揮するマクロレンズ。某アンケートによれば、2本目に購入を検討している交換レンズはマクロレンズが大勢を占めたということからも、その人気の高さが分かるというものである。
あとは、「何(被写体)」を「どのように」撮りたいのかによって、レンズの焦点距離をお決めいただくことになる。(詳細は次回に)ちなみに筆者は、純正の50mm及び100mmのマクロレンズ、50mmマクロズーム1X-3X、そしてSTF135mmの4本を所有しているが、現在のところ「花」をテーマにした、ボケ味を最大限生かしたポートレートマクロ(ポートレート風のマクロ撮影)にいそしんでいるため、そのほとんどがSTF135mm。残りわずかに作例用として100mmマクロを使用しているのみで、50mmマクロ及びマクロズームの出番は無い(汗)接写からポートレートマクロへと、レンズの用途は大きく様変わりしつつも根強い人気のマクロレンズ。その魅力を十分ご堪能いただければ幸いである!
次回のテーマは、「マクロレンズで何を撮る?」 乞うご期待!
2008年07月 write.
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