本文へスキップ
Martinの「デジカメ指南」
tipsメニューへ戻る
menu
tips91 初めてのデジタル化(迎え撃つフィルムスキャナ!)
いままさにデジタル全盛時代。(筆者も含め)多くの「フィルム世代」も、期待と不安をよそに過去の資産を引き継ぎつつ「デジタル世代」への階段を、一歩一歩と登りつつあるのではなかろうか。こうした諸兄への応援歌として、長年撮り貯めたフィルムのデジタル化をテーマに、tipsを展開してみたい。なお、これまでフィルムのデジタル化については、tips45「フィルムスキャナーの実力!」と題して、簡単なレビューをお届けしたが、前回のtips「台頭するフラットヘッドスキャナ」に続き、今回は「迎え撃つフィルムスキャナー」について、使用体験を交えながら改めて掘り下げていく。
さて、いかが相成るや・・・(汗)
<はじめに>
事の発端は、知人の自動車会社のオーナーから「ショールームオープンに合わせて“ミニギャラリー”を作るので写真を提供してほしい」との申し出。熱烈なファンからとはいえ「季節に応じた作品を」となると、デジタル資産ではこころもとない。そこで、約2000本のポジフィルム作品の中から(ショールームオープンに合わせて)桜の写真をセレクトすることになった。ところが、昨夏導入したWindowsXP(Pro)の最終・最強マシンとの相性からなのか、思いがけないフィルムスキャナのトラブル。
限られた期限の中で原因究明に時間を費やすのは得策ではないと判断。ワンポイントリリーフとして、フラットヘッドスキャナのフラッグシップモデルの導入に踏み切ったのであった。フラットヘッドスキャナのお陰で急場を凌ぐことは出来たものの、リリーフエース(フィルムスキャナ)復活なくして真のデジタル化は実現できないと考え、原因究明に奔走。途中経過は省くが、最終的にはドライバを元のバージョンに戻して再インストールすることでめでたく復活することと相成った。
<フィルムスキャナのおさらい>
【フィルムスキャナとは】
文字通りネガやポジフィルムに光を当てて、透過光から画像を読み取るもので、かなり以前から商品化されてきた。しかしながら、取り扱いや操作方法が難しいことなどから、なかなかとっつき難かったというのが、正直なところである。最近になって、フラットヘッドスキャナとよばれるコピー機のようなイメージスキャナに、透過原稿用のユニットを付けたものが多く出回るようになり、手軽にデジタル化が出来るようになってきたが、高画質という点ではフィルムスキャナには到底及ばない。
【フィルムスキャナーの遍歴】
筆者は1993年頃、N社のCOOLSCAN(初代機)を購入。当時はピント合わせもマニュアルで、その取扱には大変苦労させられた思い出がある。のちに2世代機にバージョンアップしたが、当時、まともに(写真画質で)出力できるプリンタがなかったのがネックであった。もちろん第2世代機といっても、操作方法はお世辞にも使いやすいとは程遠いものだった。
【あえていま】
デジタル全盛時代にあえて選ぶフィルムスキャナ。過去の苦い経験を引きずりながらも、簡単便利でしかも高画質(ずいぶん欲深い)、おまけに安価なら言うことなし。品定めの末に選んだのが、CM社のDiMAGEScan Elite5400。(といっても4年も前の話。既にメーカーは事業から撤退している)
<スキャン!その前に・・・>
スキャンは、PhotoShopCS3からの「TWINドライバ」でスキャナを起動し、16ビットTIFFファイルにて保存する。また、保存したTIFFファイルは、Lightroomでライブラリとして読み込み、調整の後に(同ソフトにて)A3写真用紙に印刷する」という工程。(スキャナの設定は以下のとおり)
◆入力用原稿は、35mmポジ(スリーブ)フィルム
◆解像度は2700dpi
フラットへッドスキャナのテスト環境に合わせるため、1ファイルあたりおよそ50MB強を基に、読み込み解像度を2700dpiと決めた。
◆DIGITAL ICE 及び アンシャープマスク はOFF
作業時間を省くためにも、傷等のやむをえない場合を除きDIGITAE ICEはOFF。また、スキャン後の編集を最大限生かすためにも、アンシャープマスクはOFFとした。
◆読み取りは48ビット
48bit(R/G/B各16bit)での入力については、高品質の画像を効率よく作成出来るため、出版用途や画質調整を使い慣れたフォトレタッチソフトで行う場合などによく利用される。大幅なレタッチを行う場合は(往々にして)階調飛びが激しくなり粗い画像になるため、48bit でスキャンしておけば(24bitでスキャンした場合に比べ)レタッチ後の階調飛びを抑えることが出来るからである。
なお、ディスプレイ表示は24bitまでのカラーデータ(1,677 万色)しか対応していないため、48bitカラーでスキャンしても24bitカラーでスキャンしても、ディスプレイ上では違いがわからないので念のため。
◆TIFFファイルで保存
TIFFファイルは、16ビットでしかもカラーマネジメント環境を保持したま保存出来るほか、PSDファイルに比べ圧縮機能があるため(最良の画像を維持しつつ)ファイルがコンパクトであること。しかも、PhotoShopCS3で作成したレイヤーもすべて利用可能であるだけでなく、Lightroomに読み込んだ場合、RAWファイルと同様にライブラリに読み込まれ、現像モジュールで調整可能となる。
◆カラーマネジメント
異なる機器同士でも、色空間の設定を合わせることだけでもほぼ問題なく色を再現することが可能。これとは別に、各機器特有の色情報を一旦共通の色空間に翻訳し、その後色情報を渡す機器の色空間に翻訳し直す過程を設けると、より柔軟な色管理を行うことができる。この機器固有の色空間を共通の色空間にするために使われる情報を記録した辞書のようなものがICC プロファイルである。Elite5400でICMを利用して、より高度なカラーマッチングを行いたい(例えば、Adobe RGB 出力をしたいなど)場合には、右図のように設定することになる。
<いざ!スキャン・・・>
◆Dimage Scanの起動
EPSON Scanには、簡単スキャンモードと標準スキャンモードが搭載されているが、機能をフルに活用するためにもここは「標準スキャンモード」で起動したい。
・PhotoShopCS3を起動する
・メニューから 「ファイル」をクリックする
・ドロップダウンメニューが開くので、「読み込み」をクリックする
・さらにドロップダウンメニューが開くので、「DiMARGE Scan1.1」をクリックする
◆フィルム原稿の準備
35mmストリップ(スリーブ)フィルムホルダ(一度に最大6コマのプレビュー&スキャンが可能)にポジフィルムをセット。原稿挿入口にホルダをあてがえば自動的に挿入され、スキャン準備の完了である。なお、フィルムを取扱うにあたっては、「指紋や汚れ、ホコリ」対策のため手袋を装着し、予めブロアーなどでホコリを払うなど細心の注意を払っておきたい。
フィルムフォルダを開く
フィルム原稿をセット
挿入口にあてがう
自動的に挿入され準備完了
◆インデックススキャン
フィルム原稿の準備が完了したら、あとはボタンを押すだけ。 インデックススキャンが終了すると下図のような画面が現れる。この中から目的の画像にチェックをいれてプレビュースキャンを行い、各種補正機能やトリミングサイズなどの設定を行うことになる。
◆プレビュースキャン
インデックススキャン画像中から目的の画像をクリックして選択ののち、プレビューボタンを押してプレビュースキャンを行う。
プレビュースキャン後の画面
◆本スキャン
各種調整を終えたら、スキャンボタンを押して本スキャンがスタートする。
(必要に応じて作業を繰り返し) すべての作業を終え、EJECTボタンを押してフィルムフォルダを排出後、EPSON Scanの操作パネルの窓を閉じれば、スキャン作業は終了する。
<スキャン画像の評価>
事前設定のとおり「解像度は2700dpi」、「DIGITAL ICE及びアンシャープマスクはOFF」、「読み取りは48ビット」にて本スキャンを行った。本スキャンに要した時間は僅かに1分。フラットヘッドスキャナに比べ約1/5の高速スキャンはフィルムスキャナーならではの早業である。
さて、肝心の画像(フラットヘッドスキャナとフィルムスキャナからデジタル化した画像)比較であるが、本スキャン後Lightroom(自動諧調)で読み込み当倍サイズで目視比較したところ、粒状性はほぼ遜色なく色調・彩度も、(あくまでも自身のイメージではあるが)ほぼ似通ったものとなった。また、プリント(印刷物での)比較においては、こちらも遜色ない仕上がりで、家人に見てもらったところコメントしなければ分からない(判断できない)との回答であった。(粗探しではないが)厳密に言うならば違いは無いとはいえないが、印刷物を額装掲示してした限りではあえて遜色ないと申し上げておきたい。考えてみれば、ファイルサイズを基準に事前(画像の仕上がりを)比較しているのであるから大きな違いが出なかったといえばそれまでであるが・・・(汗)
ただ、大きな違い(長所・短所)を挙げるとするならば・・・
【スキャンニングスピード】
フィルムスキャナ:約1分、フラットヘッドスキャナ:約4分50秒。(断トツでフィルムスキャナElite5400に軍配)
【ピント(フォーカス)】
両者とも替わらないが、反り返ったフィルム原稿の場合フラットヘッドスキャナでは(ホルダの浮きを押さえるパッドの効果もあってか)均一に読み込めたものの、フィルムスキャナではピントを合わせる個所をいろいろ変化させてみたが(結果として)均一には読み込めず、そのコマをあきらめざるを得なかった。(この点ではフラットヘッドスキャナGT-X970に軍配があがる)
Elite5400でデジタル化した画像「厳寒の上高地」より
<おわりに>
フィルムスキャナのトラブルが招いた今回のtips。事の次第はともあれ、フラットヘッドスキャナ、フィルムスキャナともに満足なレベルに至っているというのが率直な感想。両者それぞれに特徴があり、今回のテストでも如実に結果となって現れている。セレクトの基準はスピードとなろうが、「35mmフィルム」オンリー(ブローニー版や大型フィルムをスキャンできる使用のものもあるが高価極まりない)で高画質をという諸兄にはフィルムスキャナを、スピードが速いに越したことはないが、価格重視で高画質、しかも「35mmフィルムだけでなくブローニ(最大各6×20cm判)、4×5フィルム、大判の8×10フィルム(フィルムエリアガイドを使用)など多彩なフィルムに対応させたい」という諸兄にはフラットヘッドスキャナをという結論となろう。
気軽に、「フィルム原稿からデジタル化したい」という銀塩フィルムユーザーには願っても無い朗報であり、ぜひ参考にしていただきたい。技術の進歩とはいえ、昔に比べ簡単に、安価で高画質なスキャンが可能となったのは紛れも無い事実。フィルムスキャナなら当然のこと、フラットヘッドスキャナでこれだけの結果を残せるのであるから「何をか云わんや」である。
わが家の押入れには、(自然の荒廃や環境の変化などにより)今では目にすることが出来なくなった風景や自然の営みなど記録した約2000本のポジフィルムが眠っている。デジタル時代とはいえ、こうした銀塩フィルムはまさに宝の山。フィルムからのデジタル化は、その宝の山の扉を開いてくれる魔法の鍵のようなもの。今回のtipsが、(銀塩フィルムの)デジタル化を目指す諸兄の一助となれば幸いである。
2008年06月 write.
このページの先頭へ
ナビゲーション
トップページ
top page
はじめに
introduction
プロフィール
profile
使用機材紹介
item
不定期コラム
column
ギャラリー
gallry