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Martinの「デジカメ指南」
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tips119 初めてのRAW現像(一歩先行くLightroom3)
フルサイズ機がニコン、キヤノン、ソニーの3社から出揃うなど、目まぐるしい進化を遂げているデジタル一眼レフ業界。他方RAW現像ソフトも着々と改良が重ねられ、 定番のAdobe Lightroomも2009年秋にはバージョン2が登場し、オリジナルの画像を保持したまま、補正・編集することができる業界トップクラスのRAW現像ツールとして、確固たる地位を築いたところでもある。
そしてこの度、PhotoShopCS5と同様に64ビット正式対応版として、「プロフォトグラファーの写真処理・管理をもっとシンプルに」をコンセプトに、さらに使いやすくなったバージョン3が登場した。
筆者もLightroomが登場以来、使い続けているユーザーのひとりであるが、正直なところプロフォトグラファーだけに使わせるにはもったいない。パソコンが一通り扱える人なら“少しのコツ”で十分使いこなすことは可能であり、初心者ユーザーにこそ使っていただきたいとお勧めしているところである。(本tipsでも過去4回にわたり取り上げている)
そこで、今回のバージョンアップがもたらす恩恵と評価について、独断と偏見ながら推敲してみたい。さて、いかが相成るや・・・(汗)
<Lightroomってどんなソフト?>
正式には「Adobe PhotoShop Lightroom(以下、Lightroomと表記)」という名称で、PhotoShopとは全く別にカメラマンのために新規に開発されたソフトで、画像管理・現像・プリント・PDFやWebでのプレゼンテーションなど、カメラマンの基本業務に特化した、誰にでも使える容易な操作を実現した、いわゆるプロ御用達のソフトである。
初代バージョンから一貫して「ライブラリ/現像/スライドショー/プリント/Web」という5つのモジュールで構成。画面右上のモジュール表示をクリックすることで画面を切り替え、夫々の作業を行うことになる。
◆ライブラリモジュール
Lightroomでの作業は、現像したいデータを読み込むことから始まる。読み込める静止画ファイルは、各社のRAWデータのほかJPEG、TIFF、PSD形式に対応している。読み込んだデータは、サムネイルとして表示され、表示の拡大/縮小、並べ替え、EXIFなどのメタデータの確認と編集、キーワードの設定などが行える。また、各画像にレーティング(優先度)やフラグ、カラーラベルを設定し、画像を多元的に管理・分類できることが特徴のひとつである。
◆現像モジュール
Lightroomの中核をなす機能で、さまざまな画像補正を行う。利用できる機能は、ホワイトバランス補正、露出補正、階調補正、トーンカーブ、色相と彩度、明瞭度、シャープネス、ノイズ低減、レンズ補正、トリミング、スポット補正など。
これらの補正機能は、RAWデータを直接加工しているわけでなく、補正の情報として記録されるだけ。そのため、補正を何度繰り返してもオリジナルのデータは維持され、元のクオリティは損なわれない「非破壊編集」ととなっている。
◆その他のモジュール
「スライドショー」モジュールでは、PDFやMP4のスライドショーファイルに出力したり、「プリント」モジュールでは印刷やファイルへの書き出し。「Web」モジュールではHTMLやFLASH形式のWebギャラリーを作成することできる。
なお、LightroomではRAWデータだけでなく、レタッチのたびに画像情報がどんどん削られていくJEPGファイルでも、RAWファイル同様にほとんど劣化なく現像処理が出来ることから、初心者も含めJEPGを多用するカメラマンも恩恵をもたらしてくれる。そこが「Lightroomのウリ」あり、多くのカメラマンに指示されている所以でもある。
詳細は以下のtipsをご覧いただきたい。
tips83 初めてのRAW現像(PhotoShop Lightroom編)
tips87 初めてのRAW現像(Lightroomの秘密)
tips89 初めてのRAW現像(Lightroomはこう使う!)
tips100 初めてのRAW現像(進化したLightroom2)
<読み込みインターフェースの刷新>
従来のLightroom2では、読み込みファイル選択と読み込み時の設定は別のダイアログ(設定窓)で行っていたものを、すべてひとつのインターフェース(ライブラリ画面)の中で作業できるようになった。ここでの設定は「読み込みプリセット」として保存しておくことは勿論、最近、はやりの動画の読み込みにも対応している。
動画ファイルは、AVI、MOV、MP4の各形式をサポートしているものの、動画の再生や編集ができるわけではなく、サムネイルとして管理・分類でき、再生時間やメタデータを確認できるのみ。(再生ボタンを押した場合は、外部アプリケーションが起動する仕組みである)最近は動画対応のデジタル一眼が増えているので、Lightroomを使って記録メディアからデータを転送する際、静止画と動画をまとめて取り込めるという意味では便利かもしれないが・・・
まぁ、ここまではありきたりの改良であり「果たしてバージョンアップするメリットがあったのか?」などとタカをくくっていた筆者であるが、このあとLightroomユーザー故に驚きの機能を目の当たりにするのである。
Lightroomの常識は、「画像を読み込んで“なんぼ”の世界」。全ての画像を読み込み、「ライブラリ」でピントのチェックやレーティング(仕分け)作業でめぼしをつけて、「現像」モジュールで現像を行うのであるが・・・。
ところが、今回のバージョンアップでは、なんと読み込み前の画像を拡大表示して、事前にピントなどのディテールの確認をしたり、読み込み前の段階でセレクトすることにより、必要な画像のみ読み込み出来るようになったのである。JPEGファイルなどを扱う管理用ソフトでは、読み込み前の事前表示やセレクト、プレビューなどは当たり前の機能であったものの、RAWデータではプレビューすら不可能。現像ソフトに読み込んではじめて表示が可能となるのがこの種のソフトの常識であった。
なかでも、「ライブラリ」モジュールでの拡大表示(当倍から3倍)に匹敵するズーム機能は特筆すべきであり、驚くなかれなんと11倍にまで拡大表示ができるのである。もちろん11倍表示ではモザイクなってしまうが、それを割り引いても十分すぎる。
また、明らかにブレやボツとなる画像を事前に除外することで、ハードディスクの容量にも余裕ができ、読み込みの際に一括してキーワードを書き込むことも可能となるなど、ユーザー本位の画期的な改良だといえる。(これだけでもバージョンアップの価値は大である)
読み込み前のサムネイルが表示された画面
当倍に拡大表示した画像
<読み込みインターフェースの詳解>
以下では、新しくなった読み込みインターフェイスの画面表示をパーツ別に整理・詳解する。
【追加元のドライブ表示】
例示では、新たに追加して読み込む画像が保存されているドライブが自動的に検索され、リムーバブルディスク(Hドライブ)に存在することを示している
【追加ファイルの情報】
例示では、新たに追加して読み込む画像は297枚で、トータルファイル容量は6GBであることを示している
【表示切替、セレクトボタン】
左から、サムネイル表示、特定画像のみ表示(拡大など)、全てをチェック(デフォルトでは全ての画像にチェックが入っている)、全てを解除(全てのチェックを外す)する機能ボタン
【ズーム表示スライダー】
特定画像のみ表示(俗に1枚表示)の画面に現れるスライダーで、当倍から11倍まで可変して拡大することが可能
【保存先のドライブ表示】
新たに追加して読み込む画像の保存先を示す表示。例示ではFドライブ、\01_dejital_photo\02_a900フォルダを示している
【画像の追加方法】
左から、DNG形式でコピー、コピー、移動、追加
例示では、写真を新しい場所にコピーしてカタログに追加することを示している
【読み込み時に適用する現像設定など】
例示では、現像設定:α Preset3(α900のカメラ内部で、RAWデータからJEPGファイルに自動現像・保存されるアルゴリズムが設定されたパラメータファイル)メタデータ:なし、キーワード(仮にコスモスをいうキーワードを入力すると、読み込まれる画像全てにコスモスというキーワードが書き込まれ、のちにライブラリモジュールでの絞込検索などに活かせる)示している
【保存先の詳細設定表示】
フォルダへの整理方法や、フォルダ名の形式、保存先ドライブ(サブフォルダを含む)の詳細表示
例示では、Fドライブ(使用済み:543GB/ドライブ容量931GB)、\01_dejital_photo\02_a900\2010-10-18、追加枚数が297枚であることを示している
<新しく搭載された主な機能>
【ノイズリダクションと粒子効果】
Lightroom 2のノイズ軽減には、グレースケールノイズ対応の「輝度」とカラーノイズ対応の「カラー」スライダーが実装されていたが、Lightroom 3では、「輝度」に「ディテール」と「コントラスト」が、「カラー」に「ディテール」がそれぞれ追加された。これらのスライダーを調整することにより、単純なノイズの軽減だけでなく、詳細な設定が可能になり、Lightroom 3だけで高精度で自然な補正結果を得ることができるようになり、意図的に「ディテール」を低めに設定すれば、ぼかしフィルターをかけたような効果を得ることもできるようになっている。
◆「粒子」効果
デジタルイメージに、まるで銀塩フィルムのような粒状感を演出することが可能となった。例えば、モノクロ写真にこの効果を適用させれば、より味わい深い写真に仕上げることができる。(「適用量」、「サイズ」、「粗さ」の3つのスライダーで調整)
カラー写真をモノクロ変換した場合、仕上がりがのっぺりした感じが否めず、モノクロ写真とはほど遠い印象を受ける。そこで、わざと粒子を荒れさせて、あたかも高感度フィルムで撮影したかのようなテクニックを用いることも多い。モノクロ化へのテクニックは、さまざまな方法が詳解されているがいまひとつ不自然さは払拭しきれていなかったが、この効果を利用したモノクロ化では、仕上がりはとてもリアルで往年のモノクロ作品を髣髴とさせる出来栄えであり、(「1粒で2度おいしい」ではないが)カラー写真では味わえない別の楽しみ方のバリエーションとしてお勧めしたい。
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「粒子」フィルターで粒状感を演出
◆「ノイズ軽減」効果
既存の「輝度」「カラー」にディティールをコントロールするスライダーが追加され、これらを組み合わせることで、ISO感度の高い写真のノイズを驚くほどきれいに軽減させることができる。
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Camera Rawの「ノイズ軽減」フィルター
【カメラとレンズの特徴に合わせた自動レンズゆがみ補正】
広角レンズやズームレンズで撮影した場合、被写体にゆがみが生じてしまうことは多々あるが、Lightroom3ではカメラとレンズの特徴を記録したレンズコレクションプロファイルが採用され、個別の写真に対して適切なゆがみ補正を自動で行うことができるようになった。
つまり、撮影したレンズや焦点距離、F値などに応じて、歪曲収差、色収差、周辺光量の補正を自動的に行なってくれるもので、簡単に収差補正ができるのが売りである。
また、垂直方向、水平方向のパースペクティブの補正や角度(左右の傾き)の微調整も行なえるので、シフトレンズで撮影したかのような効果を得ることや、魚眼レンズの歪曲収差を補正して、普通の超広角レンズで撮ったかのように仕上げることもできる。
対応カメラメーカー:Canon、NIKON、SONY、OLYMPUS、PENTAX、SIGMA
※カメラメーカー、カメラモデル、レンズモデルの選択が可能
→
もちろん、レンズプロファイルによる自動補正だけでなく、手動で調整することも可能。手動の場合、「変形」、「周辺光量調整」、「色収差」の3つを個別に細かく調整することが可能なため、周辺光量は落としたままゆがみだけを補正することもできる。これらの機能を利用することで、短時間で精度の高いレンズゆがみ補正が実現する。
【その他の機能(オフィシャルサイトの新機能紹介)】
◆デジタル一眼レフカメラで撮影したビデオファイルをサポート
ほとんどのデジタル一眼レフカメラで撮影したビデオファイルに新たに対応。静止画像とビデオファイルを一緒に管理および整理ができる。
◆より柔軟にオンラインで公開
Lightroomライブラリから好みのオンライン共有サービスへ画像を直接投稿できる(サードパーティ製プラグインが必要な場合がある)。作品を公開し、WebポートフォリオやWebギャラリーを頻繁に更新するのが、かつてないほど簡単に。
◆画像に透かしを追加
画像にIDやブランド名、ロゴなどを簡単に埋め込み、多彩にカスタマイズ。新しい透かしツールを使用すれば、テキストやグラフィックの透かしを写真に適用し、サイズや位置、不透明度を調整できる。
◆BGM付きのスライドショービデオを簡単に作成・公開
BGM付きの洗練されたスライドショーで、画像をアーティスティックに演出しながら、クライアントや友人、家族に披露。。スライドショーの作成はいたって簡単。高画質のビデオとして書き出して、手軽に公開することもできる。
◆テザー撮影
一部のカメラでテザー撮影が可能に。撮った画像が瞬時に読み込まれ表示されるので、構図や照明、撮影設定をその場で細かくチェックでき、すぐにクライアントや被写体からフィードバックをもらうこともできる。
◆柔軟なプリントパッケージ
再利用可能なテンプレートとして保存できるカスタマイズ性の高いプリントレイアウトを使用して、よりクリエイティブに作品を公開。新しいカスタムプリントレイアウト作成ツールを使用すれば、1枚または複数の画像を1ページにドラッグし、サイズや位置を好きなように変更できる。
そのほかには、写真共有サイトへのアップロード機能や、画像に著作権表示やロゴマークを加える「透かしの埋め込み」機能を強化した。操作面では、画像入力のインタフェースの改良、印刷レイアウトの自由度の向上などを実現している。
<Lightroom3へのバージョンアップをお考えのユーザーへ>
レビュー記事ではお目にかかれない参考事項をお知らせしておきたい。
・Lightroom2のデータファイルは、コンバートしてLightroom3で新たに保存・使用することとなる(旧ファイルを残して、新ファイルが作成される)
・現像モジュールで、ダイナミックレンジが広がったことから、各ファイルに適用するかどうかのオプションがある(目に見えて変わったとは思えないが)
・複数枚の画像を1枚のレイアウトにして印刷できるようになった(従来は1枚の画像を複数の大きさで印刷はできたが)
・バグがあるのか、読み込みに時間がかかる(64bit&Corei7Qでこの遅さは異常)
ご安心あれ、既にアップデート版「3.2」が公開され、対応カメラとレンズの追加、バグフィックス、機能向上などが図られている。
「ライブラリ」モジュールでの表示例
「現像」モジュールでの表示例
<まとめ>
今回、64ビットへの正式対応版として登場したLightroom3。劇的な変貌を遂げたPhotoshopCS5のCamera Rawプラグインの新機能を付加し、目立たないながらもユーザーの視点に立った決め細やかな改良は大いに評価出来るところであり、Lightroom2からのバージョンアップの価値は大であると申し上げておきたい。
写真の補正よりも「写真を利用した作品づくり」、あるいは「写真を素材としたデザイン」に力を入れ、フォトレタッチの領域を越えつつあるPhotoshopCS5のようなデザイナーには強力なツールも、撮影した写真のレタッチと出力という用途に日常的に使うにはいささか高機能すぎる感もある。そういう諸兄には「取込→管理→現像→出力」を1本で出来るLightroom3をお勧めしたいものである。(あえてパソコンが一通り扱える初心者ユーザーにもぜひ)
<おわりに>
デジタル一眼レフの進化に伴いRAW現像もずいぶんメジャーになってきた。カメラメーカーに撮らされている感が強いJEPGではなく、オリジナリティを表現したいというカメラマンたちの意欲の表れだと、改めて敬意を表したい。とはいえ、RAW現像の魅力が普及しているとは言い難い。筆者も事あるごとにRAWの魅力をお伝えしてはいるが、敷居が高いと感じられている諸兄も少なくはない。パソコンが一通り扱える方であれば“少しのコツ”で十分使いこなすことは可能であり、ぜひこの機会にチャレンジされんことをお勧めする
バージョンアップされた「Lightroom3」の魅力の一部を、お伝えできたなら幸いである。
2010年11月 write.
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