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Martinの「デジカメ指南」
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tips117 初めてのRAW現像(全てにおいて進化したPhotoShop CS5)
フルサイズ機がニコン、キヤノン、ソニーの3社から出揃うなど、目まぐるしい進化を遂げているデジタル一眼レフ業界。他方RAW現像ソフトも着々と改良が重ねられ、 定番のAdobe Lightroom(以下、Lightroomと記す)も2009年秋にはバージョン2が登場した。ところが本家であるAdobe PhotoShop(以下、PhotoShopと記す)のほうはと言えば、こと写真に関しての機能でいえば常にLightroomの後追い感は否めない。
もともとLightroomは、PhotoShopから派生したカメラマンの基本業務に特化した、誰にでも使える容易な操作を実現した、いわゆるプロ御用達のソフトではあるものの、PhotoShopユーザーから見ればLightroomを上回るような進化を期待していた諸兄も少なくかったのではなかろうか。
生誕20年を迎える今、フォトグラファーから見た「PhotoShop」のバージョンアップがもたらす恩恵と評価について、独断と偏見ながら推敲してみたい。
さて、いかが相成るや・・・(汗)
<業界トップクラスのRAW現像ツール>
オリジナルの画像を保持したまま、補正・編集することができるRAW画像現像プラグインツール、Adobe Camera Rawに高品質な機能が追加された。
これまでは特に高感度撮影時のノイズ低減処理の性能が、純正現像ソフトに対して弱い印象があったCamrera RAWだが、新技術を採用したことで従来よりも低ノイズ化を果たしており、初期設定の状態ではノイズの粒が細かくなってすっきりした画面になる。
「ノイズ軽減」の「輝度」の値を上げると、若干細かい部分がもやっとしてくるが、その代わりに空などのグラデーション部分はぐっと滑らかになり、「輝度」の値を大きくしてもディテールの損失は小さいので、そこそこ使えそうな印象。
◆「粒子」効果
デジタルイメージに、まるで銀塩フィルムのような粒状感を演出することが可能となった。例えば、モノクロ写真にこの効果を適用させれば、より味わい深い写真に仕上げることができる。
カラー写真をモノクロ変換した場合、仕上がりがのっぺりした感じが否めず、モノクロ写真とはほど遠い印象を受ける。そこで、わざと粒子を荒れさせて、あたかも高感度フィルムで撮影したかのようなテクニックを用いることも多い。
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「粒子」フィルターで粒状感を演出
◆「ノイズ軽減」効果(精度向上)
既存の「輝度」「カラー」にディティールをコントロールするスライダーが追加され、これらを組み合わせることで、ISO感度の高い写真のノイズを驚くほどきれいに軽減させることができる。
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Camera Rawの「ノイズ軽減」フィルター
◆「切り抜き」ツール(機能拡張)
Lightroomでお馴染みのトリミングであるが、切り抜きツールで切り抜くエリアを囲むと三分割ガイドラインが表示されるようになった。バランスの取れた構図を考える上での目安となる優れものである。
◆「切り抜き後の周辺光量補正」(機能拡張)
「スタイル」というパラメーターの追加により、超広角レンズで撮影したような画面周辺の光量不足を補ってくれる。
<カメラとレンズの特徴に合わせた自動レンズゆがみ補正>
CS2から登場したレンズ補正機能は、レンズやアングルによる歪曲収差を補正するため、多くのフォトグラファーに利用されてきたが、CS5ではカメラとレンズの特徴を記録したレンズコレクションプロファイルが採用され、個別の写真に対して適切なゆがみ補正を自動で行うことができるようになった。
つまり、撮影したレンズや焦点距離、F値などに応じて、歪曲収差、色収差、周辺光量の補正を自動的に行なってくれるもので、簡単に収差補正ができるのが売りである。
また、垂直方向、水平方向のパースペクティブの補正や角度(左右の傾き)の微調整も行なえるので、シフトレンズで撮影したかのような効果を得ることや、魚眼レンズの歪曲収差を補正して、普通の超広角レンズで撮ったかのように仕上げることもできる。
対応カメラメーカー:Canon、NIKON、SONY、OLYMPUS、PENTAX、SIGMA
※カメラメーカー、カメラモデル、レンズモデルの選択が可能
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<複雑な選択範囲を正確かつ、迅速に作成>
正確な選択範囲の指定は、多くの時間を要し、フラストレーションも溜まる作業である。これまでにも似たようなツールが発売されてきたが、その都度期待を裏切られてきた筆者にとっては、まさに魔法のツールの到来である。
CS5では、新しいTrue Edge Selectionテクノロジーにより、髪の毛や動物の毛並みなど、これまで困難とされてきた複雑な選択範囲を、以前よりも速いスピードで、より正確に作成することが可能となった。
境界線(マスク)を調整ダイアログには、境界の半径を自動で最適化する「スマート半径」や選択範囲内の不必要なカラーを自動削除する「不要なカラーの除去」など、強力で便利なオプションが追加。それに加え、部分的に半径を調整することができる「半径調整ツール」や、それをやり直すための「調整消去ツール」を利用することで、今まで悩まされてきた複雑な選択範囲の品質と作業効率を飛躍的に向上している。一押しの機能だと言える。
◆「境界線を調整」ダイアログ
まずは「クイック選択ツール」などを使っておおまかな選択範囲を作成し、選択系ツールのオプションバーや選択範囲メニューから「境界線を調整」の画面を開く。
続いて、境界部分を確認しやすい表示方法を選び、「半径」スライダでどこまで選択範囲とするかを微調整する。このとき「スマート半径」という項目にチェックを付けると、さらに細かい調節が可能。
◆「半径調整ツール」
顔から出ているヒゲなどを選択するには、「半径調整ツール」でヒゲの上をなぞる。これまで、ペンタブレットなどを使って、まさにヒゲを描くような細かい作業が必要だったが、「半径調整ツール」では大まかになぞるだけでCS5が輪郭を自動判別してくれる。この精度が非常に高い。
輪郭部分に残った不要な背景をどの程度除去するかを指定する「不要なカラーの除去」という新機能も加えられた。あとは、必要に応じてエッジのなめらかさやぼかし具合を調整し、選択範囲やレイヤーマスク付きレイヤーとして出力する。新しい「境界線を調整」により、ネコの体毛はもちろん、顔から出ているヒゲの部分が、驚くほど簡単に選択できるのである。
<魔法のような自動ゴミ除去機能>
不要物を非常に簡単な手順で、まるで魔法のように除去する機能が追加された。
従来の「面倒で、視力が落ちまくるような作業」が必要だった処理が自動化された。そのひとつが「コンテンツに応じた」補正である。
「写真を補正」するというのは「元の絵からどんな絵にしたい」のかを考え、それに応じた処理をすること。新機能はこの作業を自動化してくれる。早い話が、元となる絵の内容に合わせた処理をしてくれるのである。
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このコンテンツに応じた塗り機能を利用する方法は、以下の2通り
◆スポット修復ブラシツール
このツールは以前から搭載され便利な機能であったが、修復の背景が複雑だと破綻してしまうため、ディテールはより慎重に目を凝らして作業する必要があった。CS5では「コンテンツに応じる」というオプションが追加された。このオプションを選択し、今まで通りマウスで不要物をなぞるだけで、きれいに消し去ることができる。
使いこなしのコツは「ブラシサイズ」。背景がシンプルな時は大きなブラシでざっくりなぞればよく、複雑なときはブラシサイズを小さめにするとよさそうだが、サイズで結果は変わってくるので、うまくいかなければやり直してみるとよい。予想以上に実用的であることを実感していただけるに違いない。
◆「塗りつぶし」機能
メインメニュー「編集」>「塗りつぶし」を選択して表示されるダイアログの「使用」を「コンテンツに応じた」に設定すれば、あたかもその場に初めからなかったかのように、不要物を除去してくれる魔法のような機能である。
作業はシンプル。まず消したいものの周りを範囲選択し、イメージメニューから「塗りつぶし」を実行するだけだ。こちらも「範囲選択」の調整がポイント。背景がシンプルな時は矩形で大雑把に選択して構わないが、細かいときはぎりぎりに選択した方が破綻しないようである。「コンテンツに応じた塗り」は、もともと存在しない背景を補うため、写真の内容によって一度の操作では自然な仕上がりにならない場合もあるが、修復の精度はかなり高いので再修正になったとしても手間は少なくてすむ。
<大量、大規模ファイルを高速処理>
迅速なパフォーマンスと巨大な画像の処理は、多くのPhotoshopユーザーにとって大変重要。CS5では64-bit版OSをネイティブサポートし、搭載したメモリを最大限に生かして、日常的に巨大なサイズの画像を大量に扱うユーザーに最大限の恩恵をもたらしてくれる。
対応OS Windows7、Vista
※Photoshop CS5のインストール時に、64-bit用のインストーラを選択する必要がある
<簡易版Bridge。手軽でシームレスなファイル管理>
CS2での登場以来、進化し続けてきたメディア管理ツールAdobe Bridge。
今回、初登場となったAdobe Mini Bridgeは、Photoshopのパネル内から、そのBridgeの機能へアクセスできるツールで、Bridge同様に検索フィルターを使用することができるため、アプリケーションを切り替えることなく、Photoshop内で目的のファイルを探し出すことができる。「Mini Bridge」は1つの機能としてPhotoshopに組み込まれているので、常に画面に表示したまま使用できる。
大量の画像を扱う場合は、Bridgeの使用を、そうでない場合はMini Bridgeによる手軽で軽快なファイル管理がおすすめとなる。
<まとめ>
Photoshopは写真の補正よりも「写真を利用した作品づくり」、あるいは「写真を素材としたデザイン」に力を入れており、「コンテンツに応じた補正」はフォトレタッチの領域を越えつつある。
レタッチして作品を作ったり、ディテールまで修整して納品するフォトグラファー、さらにデザイナーには強力なツールだが、撮影した写真のレタッチと出力という用途に日常的に使うにはやや高機能すぎる。そういう諸兄には「取込→管理→現像→出力」を1本で出来るLightroomをお勧めしたい。
フォトグラファーが日常的に利用するにはLightroom、さらに高度で複雑な編集作業が必要になったらPhotoshopという棲み分けで、使い分けていただければいいであろう。
<おわりに>
デジタル一眼レフの進化に伴いRAW現像もずいぶんメジャーになってきた。カメラメーカーに撮らされている感が強いJEPGではなく、オリジナリティを表現したいというカメラマンたちの意欲の表れだと、改めて敬意を表したい。
生誕20年を迎える今、レタッチして作品を作ったりディテールまで修整して納品するフォトグラファー、さらにデザイナーには強力なツールとしてさらに進化したPhotoShop。「コンテンツに応じた補正」では、もはやフォトレタッチの領域を越えつつあると言っても過言ではない。満を持してバージョンアップされた「PhotoShopCS5」の魅力の一部を、お伝えできたなら幸いである。
2010年08月 write.
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