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Martinの「デジカメ指南」
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tips 103 初めてのRAW現像(プリンタの性能限界を超えて)
フルサイズ機がニコン、キヤノン、ソニーの3社から出揃うなど、目まぐるしい進化を遂げているデジタル一眼レフ業界。他方RAW現像ソフトも着々と改良が重ねられ、 定番のAdobe Lightroom(以下、Lightroomと記す)も、昨秋、バージョン2が登場するなどRAW現像の環境もより身近なものとなり、多くの諸兄がRAW現像に親しまれていることと拝察する。しかしである。RAW現像が普及したとはいえ、「現像した画像の色調・彩度がそのまま印刷できない」など、いまだにこれらの悩みを持つ諸兄も少なくない。そこで登場するのが、プリンタキャリブレーションツール。しかし、このツールを用いても解決できないプリントが存在する。先のtipsでも少し触れたが、プリンタの能力が限界に来ていることを意味するのである。
そこで今回は、その限界を克服するために導入したPX-G5300の実力を、従来のPX-G5000などと比較しながら検証してみたい。
<はじめに>
前々から気になっていたことであるが、あるレンズを用いて撮影した画像でのみ、例外的にグラデーションが不自然でうまくプリントすることが出来なかった。そのレンズとは、写真における理想のボケを徹底追求、輪郭が不自然に強調されず、なめらかでとろけるように美しいボケ味を実現したスペシャルレンズ「αSTF135mm/F2.8[T4.5]」である。
背景が輪郭のないとろけるようなボケ味が特徴であるだけに、グラデーションの忠実な再現が生命線となるが、プリンタマネジメントシステムのSpyder3printを以ってしても見事に裏切られてしまったのである。このスペシャルレンズの魅力をインクジェットプリンタで忠実に再現することは出来ないものかと考えあぐねた末、EPSONサポートの門をたたいたのである。
<すばらしき対応>
通常ならば、特定のレンズを使用して撮影したデータでのみ、現象が発生している場合は、そのデータに起因している可能性が高く考えられる、一度、ご使用のレンズおよびカメラのメーカーへお尋ねを・・・で、終わってしまうところであるが、希望のデータを使用して検証用機材のPX-G5300、PX-5600にて印刷を行い、その印刷結果を送付することは可能であるとの計らいから、かくしてサンプルデータを送付してテストプリントを依頼することと相成った。
手元にないプリンタだけに、EPSONが用意しているプリンタプロファイル(機種別・用紙別)で、モニタ表示の色調・彩度がどこまで忠実に再現できるかに注目。結果は2機種とも「PX-G5000での出力を凌ぐ仕上がり具合で、問題は全て解決である。特にPX-5600の滑らかな諧調がひときわ目を引くのが印象的」である。
次にモニタとの比較では「EPSON純正のプロファイルながらPX-G5300は最も酷似しているのに比べ、PX-5600では微妙なトーンに違いがあるものの、豊かな諧調には何故かひかれるものがある」である。
PX-G5000
PX-G5300
PX-G5600
テストプリントを元にいろいろ検討を重ねた末、光沢紙プリントを常とするスタイルから、PX-G5000の後々継機(間にPX-G5100が存在)PX-G5300の導入に踏み切ることになったのである。
先ず最初に印刷したのはサンプルデータである。(当たり前のことながら)印刷結果はEPSONでのテストプリントと同じ結果となった。思わず万歳!である。
改めてEPSONサポートに感謝申し上げたい。
<不具合現象と改善の検証>
先ずは、次のサンプルデータをご覧いただきたい。なお、ここに掲載しているのは、PX-G5000及びPX-G5300でそれぞれプリントしたものをイメージスキャナで取り込み画像ファイルとしたものである。デジタル化の際には、特に色調整は施していないので色調・彩度が微妙にが違うかもしれないが、その点を割り引いてご覧いただきたい。赤枠で囲んだ部分が、特に不具合の多く出ている箇所である。
枝垂れ梅1(PX-G5000)では、緑色の背景が等高線のように縞模様が幾重にも連なり連なっているのがお分かりいただけるであろう。それに比べてPX-G5300では、黄色や緑色の縞模様がウソのように消え、グラデーション(諧調)が忠実に再現されている。
枝垂れ梅1(PX-G5000)
枝垂れ梅1(PX-G5300)
枝垂れ梅2(PX-G5000)では、少し分かりにくいかもしれないが黄色(菜の花のボケ)部分に縞模様が見受けられる。それに比べてPX-G5300では、縞模様が消えてグラデーション(諧調)が忠実に再現されている。
枝垂れ梅2(PX-G5000)
枝垂れ梅2(PX-G5300)
コスモス(PX-G5000)では、背景の黄緑色(茎や葉がボケている)が極端に強調(濃い)されて、淡い黄緑色が再現できていないことがお分かりいただけるであろう。それに比べてPX-G5300では、淡い黄緑色の背景が画面全体に、自然な色調で表現されている。
コスモス(PX-G5000)
コスモス(PX-G5300)
画面ではいささか分かりにくい点もあろうと思うがご了承いただくこととして、プリンタのグレードアップ(というよりインクの違いか?)により、抱いていた悩みは一挙に解決を見たのである。とはいえ、まだ見ぬプリンタを購入するのは大変な勇気がいるもの。今回のEPSONの協力がなければ夢の実現は成し得なかったといっても過言ではない。
デジタル一眼レフの高画質・高画素・フルサイズ化などデジタル一眼レフカメラも目まぐるしい進化を遂げているなかで、プリンタも着実に進化を遂げていたのである。思えばPX-G5000が登場したのが2004年11月であるからして、4年以上前のプリンタで、フルサイズ機+スペシャルレンズでの再現を望むのはいささか酷であったのかもしれない。PX-G5000が登場した当時、今日のフルサイズ機の登場を誰が予想したであろうか。
<デジタルプリントの救世主、PX-G5300>
「PX-G5300」は「カラリオ」ブランドに属すすと同時に「プロセレクション」の製品でもあり、一般家庭向けのインクジェットプリンタと比較して、性能、機能ともに洗練されている。
従来機「PX-G5100(PX-G5000)」と比べ、インクセットの数自体は7色(グロスオプティマイザを含めて8色)と変わっていないが、PX-Gインクとの大きな違いは、ブルーインクに変えてオレンジインクの投入していることである。
また、新しく投入されたオレンジインク採用の主眼は肌色の再現性向上にあり、従来機でよく見られたシャドー部での色被りがなくなり、自然な肌色のトーンで描かれるようになったことで、肌色に限らず花や陽光などの描写力も格段に向上している。なお、ブルーインクに変えてオレンジインクを投入したことで、シアンはやや明るめにしてライトシアンインク的に、イエローはグリーン寄りに、マゼンタはブルー寄りに調整されている。これによって、オレンジに合わせたチューニングをしつつ、なくなったブルーの領域をフォローしている。
また、グロスオプティマイザも透明樹脂と溶液を改良することで、さらに耐擦性も向上させている。そのかいあって、PX-G5300の出力は非常に平滑性が高く、顔料機とは思えないほどに違和感のない光沢を放っているほか、PX-G5100に比べて全体的な色域は格段に広くなっている。
特筆すべき改善点は、論理的色変換システムLCCSの採用である。数式アルゴリズムでバランスよく制御できるため、統合的に画質クオリティをアップ。余分な色味が混入することもなく、イメージした色を思いのままに、正確なカラーバランスで表現出来るのがこのプリンタの最大のウリである。
【論理的色変換システムLCCS】
高度なカラー表現をもっとバランスよく、実現したい。その想いに応えたのは、色彩科学で権威のあるロチェスター工科大学のマンセル色彩科学研究所との共同研究で生まれた論理的色変換システム「LCCS(LogicalColor Conversion System)」。この大きなメリットは以下の4つ。
1.源環境により生じる光源依存性の低減
2.色味とインク量を最適に制御することによる細やかな階調性
3.粒状性の低減
4.色再現領域(ガマット)を広げ、豊かな色表現
<純正プロファイルの実力>
今回のPX-G5300で驚かされたことは、純正のプロファイルでの仕上がりが「プリンタプロファイリングツールSpyder3print」で作成したプロファイルに勝るとも劣らないレベルであること。確かに、EPSONサポートによるプリントテストにおいても、純正のプロファイルでここまで仕上がるのかと驚かされたが、実際に「プリンタプロファイリングツール」でプロファイルを作成して印刷比較してみたところ、その思いはますます強くなった。全体的な色バランスが自然なのである。
このままでは終われない。かくなるうえは「プリンタプロファイリングツール」でのプロファイルの再作成や追い込みなど時間をかけて仕上げていかなければ、Spyder3printを導入した意味がないと意気込んではいるが・・・(笑)
ちなみにEPSONによれば、純正プロファイルは、モニタキャリブレーションが正確に行われて初めて実力を発揮するものであるとのこと。だとしたら、最低限、モニタキャリブレーションを行っておけば、純正のプロファイルでかなりの表現が可能となる訳であるから、まさに目から鱗だといえよう。
<おわりに>
「スペシャルレンズの魅力をインクジェットプリンタで忠実に再現したい」という、自らの思いを実現してくれたPX-G5300。スペシャルレンズ&フルサイズ機の魅力をストレートに表現してくれる心強い味方である。しかしながら、「液晶モニタで表現される色調・彩度をインクジェットプリンタで再現」させるためには、最低限「モニタキャリブレーションツール」は必須である。勿論、厳密な色調・彩度を求めるのなら「プリンタプロファイリングツール」も必要であろうが・・・。
メーカー配布の純正プロファイルを利用することで、かなりのレベルで夢が現実になることは今回の実験で証明(もちろん優れた性能のインクジェットプリンタでという条件は付くが)されていることから(出来れば液晶モニタもと言いたいところであるが、それぞれご事情もあろうかと思うので)ここはあえて「モニタキャリブレーションツール」に拘りたい。「モニタキャリブレーションツール」の価格もこなれてきているので、一度検討されてみては如何か。tips101 初めてのRAW現像(進化したモニタキャリブレーションツール)
但し、プリンタプロファイルを評価するのは人間であり、液晶モニタや印刷物を目視する人間の感性や趣向に大きく影響されるといって過言ではないが、少なくとも正しい理解と環境整備で見違えるような結果をもたらしてくれるのも事実である。
最小の経費で最大の効果を求める諸兄に、レビュー記事では決してお目にかかることの出来ないPX-G5300の魅力をお届けできたならば幸いである。
2009年06月 write.
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