正式には「Adobe PhotoShop Lightroom(以下、Lightroomと表記)」という名称で、PhotoShopとは全く別にカメラマンのために新規に開発されたソフトで、画像管理・現像・プリント・PDFやWebでのプレゼンテーションなど、カメラマンの基本業務に特化した、誰にでも使える容易な操作を実現した、いわゆるプロ御用達のソフトである。 LightroomではRAWデータだけでなく、レタッチのたびに画像情報がどんどん削られていくJEPGファイルでも、RAWファイル同様にほとんど劣化なく現像処理(一部制限あり)が出来ることから、初心者も含めJEPGを多用するカメラマンも恩恵をもたらしてくれる。そこが「Lightroomのウリ」あり、多くのカメラマンに指示されている所以でもある。多分に漏れず筆者も愛用者のその一人。Lightroomでは専ら画像管理・現像処理・Web出力を、プリント出力並びにJEPGファイル化については、PhotoShopに転送して処理を行っている。 しかし最近では、そのPhotoShopの出番もめっきり減り、ほとんどLightroomで済ませているのが現実。使えば使うほど手放せなくなる、奥の深いソフトウェアである。なお、Lightroom2が登場して約5ヶ月、現在のバージョンは2.2となっている。 |
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5つのモジュール |
【Lightroom2の主な新機能】 ・補正ブラシによる覆い焼き、焼きこみが可能 ・画像整理のためのツールがさらに充実 ・大量の写真を効率的に管理 ・拡張可能なアーキテクチャ ・複数モニターのサポート ・柔軟なプリントパッケージ機能 ・Adobe Photoshop CS3 とスムーズに連携 ・出力時のシャープ処理機能を強化 ・WindowsR VistaRおよびMac OS(Leopard)の64-bit版に対応 など |
画像整理のためのツールがさらに充実した。具体的には検索機能が強化され、「ライブラリフィルタ」と「スマートコレクション」の2機能が追加された。 【ライブラリフィルタ】 カメラ名、レンズ名、ISO感度などをキーに絞り込みを行う機能で、項目の数や組み合わせを変更することも可能。検索可能な条件が大幅に増え、画像に含まれるあらゆるデータから詳細に検索できるようになったのは大いに評価できよう。 【スマートコレクション】 指定した検索条件に沿った画像を自動的に表示するもので、デフォルトの「5つ星」、「過去1ヶ月」などに加え、任意のスマートコレクションを作成できる。 特筆すべきは、コレクションパネルがライブラリモジュールだけでなく、スライドショーモジュール、プリントモジュール、Webモジュールにも表示されるようになったこと。Webギャラリーを作りたいときなどに、ライブラリモジュールで作ったコレクションからWeb出力する写真を簡単に選択出来るなど、使い勝手は飛躍的に向上している。 とはいえ、大量の画像を複数のカタログに分散して管理している筆者としては、レーティングにカラーが使えることやフィルタパネルでの振るい分けが、いとも簡単に出来ることのほうが有難いのであるが(汗) |
らくらく操作のフィルタパネル | レイティングパネル |
ボリューム名表示 |
今回のバージョンアップの目玉は、なんといっても部分補正が可能になったこと。従来のLightroomでは、画像全体に補正がかかってしまい、部分的な処理や特定の範囲に補正をかけるためには、いったんPhotoshopなどにデータを渡して処理をしなければならなかった。しかし、Lightroom2
で搭載された新機能の[補正ブラシ]や「段階フィルタ」がこの問題を一気に解決してくれている。これだけでもバージョンアップの価値は十分にあるといえよう。 また、Photoshopとの連携強化も見逃せない。従来のようにTIFFやPSDファイルに書き出すことなく、Photoshopでのフィルタ処理、画像の拡大縮小、変形などの処理が、オリジナル画像を壊すことのない非破壊編集行え、結果はライブラリに自動的に反映される。 Lightroom2からみれば、Photoshopでの「パノラマに結合」や「HDRに統合」、「レイヤーとして開く」といった機能が利用できるわけであり、両方のユーザーにとってはまさに朗報となろう。このほかにも、明瞭度や画像周辺部の明るさ補正など、機能が強化された点も見逃せない。 |
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マウスでなぞるだけで、言わば 「焼き込み」や「覆い焼き」が出来る。しかも、補正項目は露光量・明るさ・コントラスト・彩度・明瞭度・シャープ・カラーの7つ。ブラシのサイズやぼかし、流量、密度を設定することで、大まかな補正にも細かい補正にも対応が可能となっている。 便利なのは、オプションの「自動マスク」。補正したい調整機能を選択したら、ポイントを設けてデータをサンプリング。あとは、マウスを使ってその部分をブラシでなぞるだけで画像の部分補正が完了するのである。「自動マスク」にチェックを入れておくことで、ブラシの適用範囲(サンプリング)を同系色内に制限することが可能となるため、補正による他への影響を極力少なくすることが出来るというからくりである。 焼き込みや覆い焼きはもちろん、部分的なシャープネスやコントラストの調整ものほか、ブラシの「明瞭度」にマイナスの値を設定して、人物の肌などの特定の部分のみをぼかしたり、「カラー」による着色機能を使って部分的な色かぶりを補正することも出来る「補正ブラシ」ではあるが、簡単操作の段階フィルタに比べ、雑に使うと塗りムラが生じやすく、完璧に使いこなすには(正直)慣れが必要であろう。 それなら、Photoshopの調整レイヤーやレイヤーマスクを使えば・・・とも考えたくなるが、Lightroomのメリットはすべて非破壊編集。元のRAW画像の品質を損なうことなく、何度でも編集の試行錯誤ができることを考えれば、いやがおうでも使いこなせるようになりたいツールである。 |
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画像上をドラッグするだけで(ドラッグした範囲に)簡単にグラデーション調整が出来る。補正項目は「補正ブラシ」と同様に、露光量・明るさ・コントラスト・彩度・明瞭度・シャープ・カラーの7つで、複数の項目を掛け合わせて適用も可能な画期的ツール。これだけでもバージョンアップの価値はある。 例えば、水平線を境に空と海の露光量の差を補正しようとするときは、段階フィルタの露光量をマイナスに設定して画像を上から下にドラッグするだけ。空の部分にだけ段階フィルタを適用することで(露光量の強さが段階的に適用されるため)奥行き感が表現できるのである。また、明瞭度を使えば段階的にソフトタッチに仕上げることが出来たり、カラー補正を使えば、特定の色(空の部分を青くするなど)のグラデーション表現も出来る。 さらには、適用範囲の追加(1つの画像にいくつもの段階フィルタが使える)削除のほか、設定済の段階フィルタの値や向きを再調整することが出来るなど自由度も高く(比較的)簡単操作で使えるのが「段階フィルタ」のウリである。 ここだけの話、「補正ブラシ」を(完璧に)使いこなすには相当の熟度が必要。周辺からの焼き込み効果を表現するだけならば「段階フィルタ」のみで十分。 その方法は、「段階フィルタ」を上下左右、斜めなどからいくつも使って焼き込み効果を狙ったり、上から重ね合わせることで微妙な調整を実感しながら効果を表現するのである。“周辺からの”という条件付ながら、簡単操作で思いのほかハイレベルの効果が得られる「段階フィルタ」。一度お試しあれ! |
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明瞭度とはバージョン1.1から追加された機能で、画像の輪郭部のコントラストを調整する働きを持つ一見地味ながら意外と役立つツールである。 バージョン1.4までは明瞭度を「0」から「+100」の間に設定することで、画像にメリハリや立体感を与える役割りを担っていたが、これに加えて新バージョン2.0では「0」から「−100」の間に設定することで、画像に薄衣をかけたようなソフトタッチに変換できるようになった。 今回新たに追加された「補正ブラシ」や「段階フィルタ」の中の調整項目にも明瞭度が追加されていることから、部分的に施すことも可能となっている。 例えば、「補正ブラシ」の「明瞭度」にマイナスの値を設定して、人物の肌などの特定の部分のみを微妙にぼかしたりして(肌のシワやキズが目立たなく)調整することも可能であることから、女性の肌などを滑らかに表現する手段として大いに役立つのではなかろうか。 |
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プロ向けフォトレタッチソフト「Photoshop」との連携が強化され、PhotoshopCS4(事前にCameraRAWを5.2にアップデートする必要あり)では、従来のようにTIFFやPSDファイルに書き出すことなく、画像を直接開くことが可能になった。つまり、PhotoshopCS4のフィルタ処理、画像の拡大縮小、変形などの画像処理をオリジナル画像を壊すことなく(非破壊編集で)行え、その結果はLightroom2のライブラリに自動的に反映されるのである。また、データをPhotoshopCS4に引き継ぐとスマートフィルタになるため、HDRやパノラマ合成などその後の作業が簡単に行えるなど、PhotoshopCS4でイメージ通りの効果を与えられるのが強み。 なお、右クリックメニューの中に従来の「AdobePhotoshopで編集」のほか、以下のメニューが追加されている。 ・Photoshopでパノラマに結合 画像の合成機能であるPhotomergeでシームレスなパノラマ写真が作成 ・PhotoshopでHDRに統合 露光量の異なる画像を合成、ダイナミックレンジを実現するHDR画像が手軽に作成 ・Photoshopでレイヤーとして開く 複数の画像から合成画像を作りたいとき、Photoshopのレイヤーとして開くことができる |
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プリントモジュールの画面 |
Webモジュールの画面 |
プリントレイアウトのJPEG出力 |
出力時のシャープ適用 |
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